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クライアントワーク

千葉都市モノレール「空中さんぽマップ」を受講生が作った話

文:西脇 靖紘

デザインスクールのサイトに「実案件に参加できます」と書いてあるのを見て、実際のところ何をどこまでやらせてもらえるのかが分からない、と感じたことはないでしょうか。課題に「クライアント想定」と付いているだけなのか、本当に納品まで行くのか。この差はとても大きいのに、募集ページからは読み取れないことがほとんどです。

2025年10月7日、千葉都市モノレール株式会社の沿線紹介サイト「空中さんぽマップ」が一般公開されました。制作したのは、デジタルハリウッドSTUDIO千葉の受講生と、運営元であるlanitech合同会社です。同日、千葉都市モノレール・株式会社フューチャーリンクネットワーク・lanitech合同会社の3社合同でプレスリリースが配信されています。

この記事では、この案件がどういう経緯で始まり、受講生がどんな形で関わり、公開後どうなっているのかを、公開されている情報の範囲で整理します。実案件に参加するというのが具体的に何を指すのか、その一例として読んでいただければと思います。

何が公開されたのか

公開されたのは、千葉都市モノレールの公式サイト内にある沿線紹介サイト「空中さんぽマップ」です。

  • 公開日:2025年10月7日
  • URL:https://chiba-monorail.co.jp/sightseeing/
  • 内容:千葉都市モノレール沿線にある観光・生活スポットの紹介。公開時点では、都市アイデンティティに関わる拠点を中心に掲載

千葉都市モノレールは、千葉市内を走る懸垂型モノレールです。「空中さんぽ」という名前は、線路が上にあって車両がぶら下がって走るという、この路線の特徴から来ています。

沿線紹介サイトというのは、鉄道会社にとって典型的な制作物のひとつです。ただ、典型的だからこそ難しいところがあります。「沿線にはこんな場所があります」という情報を並べるだけなら誰でも作れる。そこから一歩進んで、住んでいる人にも、観光で来る人にも意味のある形にするには、地域を知っている必要があります。

きっかけは、貸切列車だった

この案件が始まった経緯について、プレスリリースには「弊社の貸切列車をご利用いただいたご縁もあり」と記載されています。

営業活動の結果として受注した案件ではなく、別の接点から始まっているという点は、地域の仕事の入り方としてかなり典型的です。同じ地域で活動していると、制作以外の場面で先に顔が見える。そこから「そういえば、こういうことはできますか」という相談が来る。

この構造は、千葉で仕事をしていくうえで意味があります。都内の大手制作会社と入札で正面から競うのではなく、地域の中での関係から仕事が生まれる。規模は大きくなりませんが、途切れにくい。

コンペ形式だった——受講生が競い、採用されたデザインで作る

この案件でいちばん特徴的なのは、進め方です。プレスリリースには「受講生が実際の企業案件にコンペ形式で挑戦し、採用されたデザインをもとにWebサイトを制作」と記載されています。

つまり、講師が作ったデザインを受講生が手伝ったのではなく、受講生が案を出して競い、選ばれた案が実際に世に出たということです。

これは、参加した全員が採用されたわけではないという意味でもあります。選ばれなかった案もある。ここを曖昧にしないほうがいいと考えているので、書いておきます。

ただ、コンペで落ちることには意味があります。落ちた理由が、実際のクライアントの判断として返ってくるからです。課題の添削では「もっとこうしたほうがいい」というアドバイスで終わりますが、コンペでは「この案が選ばれた」という結果が出る。なぜ自分の案ではなかったのかを、選ばれた案と並べて考えることになります。

コンペという形式が、学習として効く理由

実案件への参加のさせ方には、いくつかの型があります。それぞれ、身につくものが違います。

形式 受講生がやること 身につくもの 限界
見学・同席 打ち合わせに同席する 現場の空気感 手を動かしていない
作業分担 決まったデザインの一部を作る 実務の手順、納品品質 設計の判断をしていない
コンペ形式 企画から案を出し、競う 設計の判断、選ばれる理由 採用されない場合がある
単独担当 ヒアリングから納品まで一人で すべて スキルが足りないと成立しない

コンペ形式は、この中では中間に位置します。設計の判断を自分でしなければならない一方で、採用されなくても案件自体は前に進む。受講生にとってはリスクが取れる形であり、クライアントにとっては複数案から選べるという利点があります。

そして、採用された人にとっては「自分が決めたことが、そのまま公開される」という経験になります。これは課題では絶対に得られません。課題の成果物は、提出したあと誰の目にも触れずに終わります。

3社の役割分担——納品して終わりではない設計

この案件には3社が関わっています。プレスリリースに記載されている役割は次のとおりです。

会社 役割
千葉都市モノレール株式会社 案件の発注
lanitech合同会社(デジタルハリウッドSTUDIO千葉 運営) Webサイト制作
株式会社フューチャーリンクネットワーク 公開後の運営・保守管理

制作と、公開後の運用が別の会社に分かれている点に注目してください。フューチャーリンクネットワークは、地域情報サイト「まいぷれ」を運営している会社です。沿線のスポット情報を継続的に更新していく仕事は、地域情報を扱うことを本業にしている会社のほうが向いています。

Webサイトの仕事を「作って納品する」ところまでだと考えていると、この構造は見えてきません。実際には、公開はスタート地点です。情報が古くなれば価値は下がり、更新されないサイトは半年で使われなくなります。

制作の段階で「誰がどうやって更新するのか」が決まっていないサイトは、公開直後がいちばん良い状態で、あとは劣化していきます。逆に、更新の担い手が決まっていれば、公開後に育っていきます。

実案件に関わると、こういう構造が見えます。課題制作では、納品後の話は出てきません。

課題制作と実案件は、何が違うのか

受講生から実際によく出るのが「課題をちゃんとやっていれば十分では」という疑問です。違いを整理しておきます。

比較軸 課題制作 実案件
クライアント 想定(架空) 実在する
要望 課題文に書いてある 聞き出す必要がある
評価軸 よくできているか 目的を果たすか
締切 延ばせることがある 動かない
やり直し 何度でも 回数に限りがある
公開後 ない 運用が続く
ポートフォリオでの説明 「こういう想定で作りました」 「これは公開されています」

いちばん大きいのは、要望が課題文に書かれていないことです。実際のクライアントは、自分が何を求めているかを言語化できていないことがほとんどです。「若い人にも来てほしい」「もっと分かりやすくしたい」といった言葉から、具体的に何を作るのかを組み立てていく。この作業は、課題では発生しません。

そして、締切が動かないという点も効きます。プレスリリースの日程が決まっていれば、それより後には公開できない。「あと少し詰めたい」が通らない状況で、どこで手を止めて出すかを判断する経験は、実務そのものです。

実案件の経験は、就職活動でどう効くか

未経験からの転職活動では、ポートフォリオが評価の中心になります。ただ、採用側から見ると、未経験者のポートフォリオはどれも似た構成になりがちです。自主制作のサイトが数本、架空のカフェやサロンのLPが数本。

そこに「公開されているサイトの制作に関わった」という項目が1つ入ると、話す内容が変わります。

1. 実在の相手がいた話ができる。 誰の何を解決するために作ったのか、要望をどう解釈したのかを、具体的に説明できます。

2. 制約の中で判断した話ができる。 締切、予算、既存サイトとの整合、更新のしやすさ。実案件には必ず制約があり、その中で何を優先したかは、実務能力そのものです。

3. 選ばれた/選ばれなかった経験を話せる。 コンペ形式であれば、なおさらです。採用された人は理由を説明でき、されなかった人は差を分析した話ができます。面接では、後者のほうが評価されることさえあります。

4. URLを見せられる。 これは単純ですが強い。ポートフォリオのスクリーンショットではなく、実際に動いているサイトを開いて見せられます。

ポートフォリオの作り方については、卒業生インタビューの一覧でも、それぞれがどんな作品を持って進んだかに触れています。

STUDIO千葉が関わってきた、ほかの千葉県内の案件

「空中さんぽマップ」は、継続してきた取り組みの中の1つです。クライアントワークの一覧に掲載しているもののうち、千葉県内のものを挙げます。

クライアント 制作物 領域
千葉都市モノレール株式会社 公式Webサイト「空中さんぽマップ」 Web制作
千葉県警察 チラシ・多言語対応の案内板・啓発アニメーション・ショート動画 グラフィック/動画
千葉県レクリエーション都市開発(蓮沼ウォーターガーデン) SNS運用・動画撮影 SNS運用/動画
千葉県香取市 名刺デザイン グラフィック
千葉県長南町 地域情報サイト Webデザイン
VONDS市原FC スターティングメンバー紹介動画 動画

並べてみると分かるのは、案件の種類が広いことです。Webサイトだけではなく、チラシ、案内板、アニメーション、ショート動画、SNS運用、名刺。地域の仕事は、職域がきれいに分かれていません。

これは、良し悪しの両面があります。ひとつの職能を深く突き詰めたい人には物足りない。一方で、複数の職能を掛け合わせて自分の形を作りたい人には、経験が早く溜まります。

また、2026年10月に千葉市美浜・稲毛エリアで開催されるカルチャーイベント「CHIBA CITY BLUES 2026」では、動画クリエイター専攻の受講生がイベント現場での撮影とSNS動画発信に挑戦する予定です。これは予定であり、実績ではありません。

実案件に参加するには、何が必要か

ここは正直に書いておきます。入学すれば自動的に実案件が回ってくるわけではありません。

1. 手を挙げる必要がある。 案件は常に走っているわけではなく、話が来たときに募集がかかります。そのタイミングで動ける状態にあるかどうかが、まず前提です。

2. 基礎の課題が進んでいる必要がある。 ツールの操作でつまずいている段階で実案件に入ると、締切に間に合いません。カリキュラムの前半をある程度こなしていることが実質的な条件になります。

3. 案件の種類と、自分のやりたいことが合うとは限らない。 Webサイトを作りたい人のところに動画の案件が来ることもあります。

4. 時間が読めない。 修正が入れば、その週の予定は動きます。仕事や家庭の都合で動かせない予定が多い方は、参加できる案件が限られます。

逆に言えば、この4つが揃えば参加の機会はあります。「空中さんぽマップ」のようなコンペ形式であれば、まず案を出すところから参加できるので、入りやすい形ではあります。

実案件に期待しすぎないほうがいいこと

実案件は万能ではありません。誤解されやすい点を書いておきます。

実案件に参加すれば就職できる、わけではありません。 材料が1つ増えるだけです。それをどう説明するかは、別の訓練が必要です。

大きな案件に関われるとは限りません。 名刺1枚、チラシ1枚ということもあります。ただ、名刺は制約が多いぶん、ごまかしが効かない訓練になります。規模と学習効果は比例しません。

すべてを自分で決められるわけではありません。 クライアントの意向、既存のブランドルール、公開後の運用のしやすさ。制約の中で作ります。「自分の作品」を作りたいなら、卒業制作のほうが自由です。

報酬が出る仕事ではありません。 学習の一環として参加する形です。仕事として受注したいなら、卒業後にご自身で動くことになります。

デジタルハリウッドSTUDIO千葉のコースと費用

実案件に関わる可能性があるのは、次のコースの受講生です(すべて税込・2026年8月時点)。

コース 受講期間 受講料 内訳
Webデザイナー専攻 6ヶ月 572,000円 入学金55,000円/受講料385,000円/設備・教材費132,000円
動画クリエイター専攻 4ヶ月 445,500円 入学金55,000円/受講料275,000円/設備・教材費115,500円
グラフィックデザイン講座 4ヶ月 319,000円 入学金33,000円/受講料187,000円/設備・教材費99,000円

受講料は、給付金で最大80%が戻る場合があります

デジタルハリウッドの一部の講座は、経済産業省の「第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)」に認定されています。支給要件を満たして所定の手続きをし、講座を修了すると、厚生労働省の専門実践教育訓練給付金として教育訓練経費の最大80%(上限640,000円)が支給されます。

対象コース 定価(税込) 実質料金(最大80%の給付を受けた場合)
Webデザイナー専攻 572,000円 220,000円
Webデザイナー専攻 主婦・ママクラス キャリアデザインプログラム 423,500円 190,300円
動画クリエイター専攻 445,500円 181,500円
グラフィックデザイン講座 319,000円 143,000円

⚠ 動画ディレクター専攻と Claude Code × Designer Bootcamp は、この制度の対象ではありません。給付の対象になるのは入学金と授業料で、設備・教材費やソフトウェアの購入費は含まれません。また、雇用保険の被保険者である(あった)ことなどの支給要件があり、受講開始の2週間前までにハローワークでの手続きが必要です。ご自身が対象になるかは、住民票のある地域を管轄するハローワークで必ず確認してください。対象講座・支給要件・申請の流れはReスキル講座と給付金のページにまとめています。

支払いは一括(銀行振込)または分割(学費ローン)から選べます。給付金・支援制度については、Reスキル講座(第四次産業革命スキル習得講座)と経済産業省リスキリング支援事業の対象講座がありますが、対象コースは講座によって異なり、支給率や要件も変わります。条件を満たすと受講料の一部が支給される仕組みですので、適用条件は個別カウンセリングでご確認ください。

受講期間は最大1年間まで取れます。教室通学とオンラインの併用が可能で、チャットでの質問もできます。校舎はJR千葉駅東口から徒歩5分、千葉中央駅東口から徒歩2分です。

実案件を重視しないほうがいい人

実案件を理由にSTUDIO千葉を選ぶべきではないケースを挙げておきます。

1. 決まった期間で決まった内容を確実に終えたい方。 実案件は、来るタイミングも内容も選べません。学習計画をきっちり守りたい方にとっては、むしろ邪魔になります。

2. 特定のジャンルだけを深く学びたい方。 地域の案件は職域が広く、専門を絞る方向とは逆に働きます。

3. 平日日中にまったく動けない方。 打ち合わせや修正対応が平日に入ることがあります。完全に動けないと、参加できる案件が絞られます。

4. 費用を最優先で抑えたい方。 Webデザイナー専攻は572,000円です。まず適性を確かめたい段階なら、独学から入るほうが合理的です。

逆に、千葉市・幕張・津田沼・船橋・市原・木更津・成田・茂原あたりから通える方で、「公開されるものを作った経験」を卒業までに1つ持って出たいと考えているなら、STUDIO千葉は選択肢になると思います。

無料説明会では、いま動いている案件の状況や、参加できる時期の目安も含めてお話しします。実際の授業を体験していただき、施設をご案内したうえで、1対1でコースを解説します。所要1.5〜2時間、来校でもオンラインでも受けられ、持ち物は不要です。時間が取りづらい方は、予約フォームのコメント欄に「カジュアル説明会希望」と記入いただければ30分のカジュアル説明会も用意しています。

沿線紹介サイトを作るとき、実際に考えること

「沿線の観光・生活スポットを紹介するサイト」と一行で書くと簡単そうに見えます。実際に作るとなると、決めることがたくさん出てきます。参考までに、この種のサイトで論点になりやすいところを挙げます。

誰に向けるのか。 沿線に住んでいる人と、外から遊びに来る人では、欲しい情報がまったく違います。住んでいる人は「知らなかった場所」を探しています。外から来る人は「どう回ればいいか」を探しています。両方に向けようとすると、どちらにも刺さらないものになりがちです。

どこまで載せるのか。 沿線には無数の店や施設があります。全部載せれば網羅的になりますが、選ばれていないので価値が下がる。絞れば方向性が出ますが、載らなかったところが出ます。「空中さんぽマップ」が公開時点で「都市アイデンティティに関わる拠点を中心に掲載」としているのは、この判断をした結果です。

駅を軸にするか、テーマを軸にするか。 鉄道会社のサイトなので駅ごとに並べるのが自然に見えますが、利用者は必ずしも駅で探しません。「子どもと行ける場所」「雨の日でも大丈夫な場所」という探し方をすることもあります。どちらを主にして、どちらを従にするか。

誰がどうやって更新するのか。 これが最後にして最大の論点です。店は閉まり、イベントは終わり、料金は変わります。更新の手間が重い作り方をすると、公開して半年で情報が古くなります。

この案件で公開後の運営・保守をフューチャーリンクネットワークが担当しているのは、まさにここへの答えです。地域情報サイト「まいぷれ」を運営している会社が引き継ぐという設計になっている。

制作側にとっては、「自分たちが更新するわけではない相手が、無理なく更新できる形」で作る必要があるということです。凝った作りにするほど、引き継いだ人が触れなくなります。かっこよさと運用しやすさは、しばしば逆を向きます。

こういう判断は、教材には書いてありません。実際に納品先が決まっている案件でしか出てこない論点です。

地域の案件は、地域のスクールにしか回ってこない

Webデザインを学べる場所は全国にあります。オンライン完結のサービスも増えました。その中で、通学型のスクールを選ぶ理由は何か——実案件は、その答えのひとつになります。

「空中さんぽマップ」の始まりが「貸切列車をご利用いただいたご縁」だったことを思い出してください。この入り方は、その地域で活動していないと発生しません。同じ市内にいて、別の接点があって、そこから相談になる。

千葉都市モノレール、千葉県香取市、千葉県長南町、VONDS市原FC、蓮沼ウォーターガーデン。並んでいるのは、どれも千葉県内の事業者・自治体・クラブです。これらは、東京の会社が営業をかけて取れる案件ではありません。逆に言えば、千葉で活動していれば継続的に発生する案件でもあります。

受講生にとって意味があるのは、この案件が「自分が知っている場所」の仕事だということです。千葉都市モノレールに乗ったことがある、沿線を歩いたことがある、あの駅の周りに何があるか知っている。その状態で作るのと、資料だけ渡されて作るのとでは、出てくるものが変わります。

「誰に届けたいのか」を考えるとき、その誰かの顔が思い浮かぶかどうか。地元の案件は、そこが有利です。

そして、卒業後にもつながります。千葉で働きたいと考えている人にとって、在学中に千葉の事業者と仕事をした経験は、そのまま次の仕事の話につながる可能性があります。都内の大きな案件を1つ経験するより、地域で3つ経験するほうが、地域で働くには効くことがあります。

実案件に入る前に、課題でやっておくといいこと

実案件の募集がかかったときに動けるかどうかは、それまでの準備で決まります。カリキュラムの課題をこなす中で、意識しておくといいことを挙げます。

1. 提出前に「なぜそうしたか」を一度書き出す習慣をつける。 実案件では、必ず説明を求められます。色、フォント、レイアウト、情報の順番。感覚で決めたものは説明できません。課題のうちから理由を言葉にしておくと、コンペで案を出すときにそのまま使えます。

2. 締切より前に一度出す。 ぎりぎりに完成させる癖がついていると、実案件では確実に事故ります。修正が入る前提で、余裕を持って一度形にする。この習慣は、実案件に入ってからでは身につきません。

3. 自分が普段見ている地域のものを観察する。 駅のポスター、店の看板、市の広報誌、施設のサイト。「これは誰に向けて作られているのか」「なぜこの情報が上にあるのか」を考える癖をつけておくと、地域の案件で発想が出ます。

4. データの受け渡しを丁寧にやる。 ファイル名、フォルダ構成、書き出し形式。地味ですが、実案件で最初につまずくのはここです。センスの問題ではなく、習慣の問題なので、課題のうちから整えられます。

5. 分からないことを、早い段階で聞く。 実案件では、締切が動きません。詰まってから一人で数日粘ると、間に合わなくなります。校舎で相談する習慣がある人は、実案件でも詰まりません。

STUDIO千葉には約40名のサポートスタッフがおり、校舎にトレーナーが在席する時間帯があります。どんな経歴の人が教えているかは講師・スタッフの一覧で確認できます。

公開されたあと、どうなったか

「空中さんぽマップ」は2025年10月7日に公開され、運営・保守はフューチャーリンクネットワークが引き継いでいます。

制作に関わった受講生にとって、この案件はもう手を離れています。ここが、実案件のもうひとつの学びどころです。

自分が作ったものが、自分の手を離れて動き続ける。更新されて、内容が変わっていく。当初の設計とは違う使われ方をすることもある。これは、卒業制作では起きないことです。卒業制作は、提出した時点の形のまま残ります。

仕事としてWebサイトを作るというのは、この「手放す」ところまでを含みます。自分の作品として抱え続けるものではなく、相手のものとして渡す。渡したあとに使いやすいかどうかまでを含めて、制作の品質です。

実案件を1つ経験すると、この感覚が入ります。そして、この感覚があるかどうかは、面接でも、入社後の仕事でも、はっきり差が出ます。

興味を持たれた方は、実際に空中さんぽマップを開いてみてください。受講生が案を出し、選ばれたデザインをもとに作られたサイトが、いまも千葉都市モノレールの公式サイトの一部として動いています。

コンペで選ばれなかったとき、何をするか

コンペ形式である以上、選ばれない人が出ます。ここをどう扱うかで、その経験が資産になるか、ただの落選で終わるかが分かれます。

採用案と自分の案を並べて、違いを言葉にする。 「あちらのほうが良かった」で終わらせず、どこが違ったのかを具体的に書き出します。情報の優先順位か、色の選び方か、写真の使い方か、それとも運用のしやすさか。多くの場合、デザインの上手さではなく、判断の違いです。

クライアントが何を重視したかを推測ではなく確認する。 トレーナーに聞けば、選定の観点は共有されます。自分で想像して結論を出すと、たいてい間違った教訓を持ち帰ることになります。

自分の案を、ポートフォリオに残す。 採用されなかった案でも、企画から作った以上は自分の制作物です。「実案件のコンペに参加し、この案を出した。採用案との違いはここだと考えている」——この説明ができる人は、面接で強い。作品そのものより、分析している姿勢が評価されます。

次の募集に手を挙げる。 案件は1回では終わりません。1度目で選ばれなくても、2度目、3度目があります。落ちたあとに手を挙げ続けられるかどうかは、実務に入ってからも同じ形で問われます。

実案件に参加する価値は、採用されることではなく、実在する相手の判断にさらされることです。採用されればそれが最短で分かり、されなくても、差を見れば分かる。どちらに転んでも、課題では得られないものが残ります。

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