在学中に実案件に入るとは、実際どういうことか
スクールのサイトを見比べていると、「在学中から実案件に参加できます」という一文によく出会います。ところが、この「実案件」が指しているものは、スクールによってまるで違います。同じ言葉なのに、中身が三段階くらい離れていることがあります。
結論から書きます。デザインスクールの実案件は、大きく①架空クライアントの模擬案件、②既存案件の一部作業、③実際に納品する制作物の3つに分かれます。どれが優れているという話ではなく、得られる経験がまったく別物です。そして、サイトの文面だけではどれなのか判別できないことがほとんどです。
この記事では、3つの違いを同じ軸で並べたうえで、実案件に入ると何が起きるのか(納期がある、修正が入る、自分の好みでは決められない)を先にお伝えします。読み終えたときに、説明会で何を聞けばいいかがはっきりする状態を目指します。
「実案件に参加できます」は、3つの意味で使われている
まず言葉の整理からです。募集ページに書かれている「実案件」は、次の3つのどれかを指しています。
①架空クライアントの模擬案件は、講師やスクールが用意した仮の依頼主に対して制作するものです。「架空のカフェのサイトを作る」といった課題がこれにあたります。要件定義書らしきものが配られ、それに沿って作ります。
②既存案件の一部作業は、スクールや提携先が実際に受注している仕事の一部分を、練習として担当するものです。バナーを何本か作る、既存ページの一部を模写して差し替え案を出す、といった形です。納品まで届く場合もあれば、届かないまま終わる場合もあります。
③実際に納品する制作物は、クライアントが存在し、締切があり、検収があり、公開または印刷まで進むものです。自分の手を離れたあとに世の中に出ます。
この3つは連続していて、②と③の境目は特に曖昧です。だからこそ、募集ページの一文では判断できません。
3段階を、同じ軸で並べる
| ①模擬案件 | ②既存案件の一部作業 | ③納品する制作物 | |
|---|---|---|---|
| 依頼主 | 架空 | 実在(直接は会わないことが多い) | 実在 |
| 締切 | スクールが決める | 作業単位の締切 | クライアント都合の締切 |
| 修正 | 講師の指摘 | 作業指示としての差し戻し | クライアントからの修正依頼 |
| 公開・納品 | されない | されることもある | される |
| ポートフォリオ掲載 | 「課題」として掲載 | 掲載可否は要確認 | 掲載可否は要確認 |
| 身につくもの | 制作の型 | 手の速さ・指示の読み方 | 進め方の全体像 |
注目していただきたいのは、一番下の行です。①では作る力が、②では処理する力が、③では進める力がつきます。転職や受注でいちばん見られるのは3つ目ですが、そこにいきなり飛ぶ必要はありません。①を飛ばして③に入ると、単純に苦しいだけになります。
①模擬案件:安全だが、「決まらない」という出来事が起きない
模擬案件は学習効率が高い方法です。要件が最初から整理されていて、途中で変わらず、手を動かすことに集中できます。未経験の方が最初に通る道としては合理的です。
ただし、実務で起きることの多くは起きません。依頼内容が途中で変わる、判断する人が複数いて意見が割れる、原稿が期日どおりに来ない、写真の権利が確認できていない。こうした「決まらない」出来事は、架空のクライアントからは発生しません。
模擬案件だけで作ったポートフォリオが弱いと言われるのは、作品の見た目が悪いからではありません。「どんな条件のなかで、何を優先して、なぜその形にしたのか」を語れないからです。条件がなかったのだから、語りようがないのです。
②既存案件の一部作業:手は速くなるが、全体は見えない
②は、実在する案件の一部を担当する形です。実際の素材やレギュレーションに触れられるので、模擬案件よりは現実に近くなります。手も速くなります。
一方で、切り出された作業だけを渡されると、前後の工程が見えません。なぜこのサイズなのか、誰が最終確認するのか、この後どこに載るのか。そこが分からないまま作ると、作業はできても判断はできない状態が残ります。
②が悪いわけではなく、③に入る前の踏み台として機能します。問題は、②を③として説明しているケースがあることです。判別したいときは「その制作物は最終的に公開・納品されますか」と聞くのが早いです。
③納品する制作物:納期と修正と、他人の都合が入ってくる
③に入ると、次の3つが当たり前になります。これは実務では特別なことではなく、単に前提です。
- 納期がある。 公開日や印刷の入稿日が先に決まっていて、そこから逆算します。体調やモチベーションで動かせません
- 修正が入る。 一度で通ることのほうが少ないと考えたほうが健全です。修正は否定ではなく工程です
- 自分の好みでは決められない。 読み手が誰か、何を伝えたいか、既存のトーンとどう揃えるか。判断の基準は自分の外側にあります
この3つを「厳しい」と感じるか「そういうものか」と受け取れるかで、実案件の向き不向きはかなり分かれます。そして、この感覚は座学では身につきません。一度でも通ると、制作物の見え方が変わります。
実案件に入ると分かる、実務の当たり前
実際に入ってみると、教材には書きにくいことが見えてきます。
ひとつは、デザインを決める前に決まっていることが多いという事実です。予算、公開日、掲載先の仕様、使える写真。この枠のなかで最善を出すのが仕事で、枠そのものを無視した提案は通りません。
もうひとつは、連絡の速さが品質の一部だということです。返事が遅いと、相手は進められません。制作物の完成度より先に、やり取りの安心感が評価されることは普通にあります。
そして、直してもらう前提で早めに出したほうが結果的に速いということ。完璧にしてから見せようとすると、方向がずれていたときの損失が大きくなります。
実案件に入らないほうがいい時期
ここは正直に書いておきます。次に当てはまる時期は、実案件に手を挙げないほうがいいと考えています。
- ツールの基本操作がまだ不安定な時期。 作業の8割が操作の調べものになると、締切のあるものには向きません。まずは教材と課題で手を慣らしたほうが早いです
- 本業や家庭の状況で、まとまった時間が読めない時期。 実案件は自分だけのペースでは進みません。抜けられない用事が続く時期は、無理に重ねない判断も必要です
- 作りたいものが明確にある時期。 自分の表現を突き詰めたい段階なら、他人の要件に合わせる作業は後回しでも構いません
- 就職・転職の面接が目前で、提出物を仕上げきる必要がある時期。 未完成の案件を抱えるより、手元の制作物を完成させるほうが優先度は高いです
実案件は早く入ればいいというものではありません。基礎が一周してから入ると、同じ案件でも吸収する量がまったく違います。
デジタルハリウッドSTUDIO千葉の場合
ここまでの分類で、当校がどこに位置するかを書いておきます。③の、実際に納品する制作物です。練習課題ではなく、クライアントが存在し、公開や印刷まで進むものを、現役のプロ講師のサポートを受けながら進めます。
これまでに関わってきた案件は、たとえば千葉都市モノレール株式会社の公式Webサイト「空中さんぽマップ」(2025年10月公開)、千葉県長南町の地域情報サイト、千葉県香取市の名刺デザイン、VONDS市原FCのスターティングメンバー紹介動画、茨城県河内町の観光冊子・看板・商品ラベルなどです。2026年4月からは、蓮沼ウォーターガーデン(千葉県レクリエーション都市開発株式会社)のSNS運用と動画撮影も担当しています。案件の一覧と中身はクライアントワーク実績にまとめています。
案件の期間は、名刺のように約2ヶ月で終わるものから、コーポレートサイトのように半年前後かかるもの、河内町のように年間を通じて続くものまで幅があります。短いものから関わり、様子を見て長いものに移っていく形が現実的です。
2026年10月に千葉市美浜・稲毛エリアで開催されるカルチャーイベント「CHIBA CITY BLUES 2026」では、動画クリエイター専攻の受講生が現場での撮影とSNS動画発信に挑戦する予定です。こちらは実績ではなく、これからの取り組みです。
Web制作に関わりたい方はWebデザイナー専攻、撮影・編集から関わりたい方は動画クリエイター専攻が入口になります。学び方そのものを比べたい方は、千葉市でWebデザインを学ぶ3つの道もあわせてご覧ください。
まとめ|説明会で聞くと違いが分かる3つの質問
どのスクールを検討する場合でも、実案件の中身を確かめる質問は同じで構いません。次の3つです。
- その制作物は、最終的に公開または納品されますか。 ここで①か③かが分かれます
- クライアントからの修正は、受講生のところまで届きますか。 届かないなら②に近い形です
- ポートフォリオに載せられますか。載せるとき、どこまで書けますか。 案件によって扱いが違うので、事前に確認しておくと後で困りません
当校では無料の個別カウンセリングを行っています。実際の授業を体験し、教室と機材を見てから、コースや案件の話をします。所要1.5〜2時間、来校でもオンラインでも構いません。「そもそも実案件に入るべき段階なのか」という相談からで大丈夫です。時間が取れない方向けに30分のカジュアル説明会もありますので、無料説明会・個別カウンセリングのページをご覧ください。
