グラフィック/プロダクト
茨城県河内町様|オリジナルナンバープレートのデザイン
茨城県河内町様の、町制30周年を記念したご当地ナンバープレート(原動機付自転車用)のデザインです。A案・B案・C案の3案を制作し、茨城県との協議を経てB案が採用されました。 現在、交付に向けた準備が進んでいます。
いちばん制約が多いデザイン
ナンバープレートは、自由度がきわめて低い仕事です。制約を先に並べると、こうなります。
- 面積が小さい — はがき1枚より小さい面に、番号・自治体名・図柄が同居する
- 番号が主役である — 図柄は番号の可読性を絶対に落とせない。これは法令上の要請でもある
- 自賠責シールの場所を空ける — 貼る位置が決まっているので、そこに絵を置けない
- 遠くから、動いている状態で見られる — 細い線・小さい文字・微妙な階調は消える
- 車体の色を選べない — 白い原付にも黒い原付にも付く
- 屋外で何年も使われる — 退色したときに何が残るかまで考える
つまり、「よく見ると凝っている」デザインが最も向かない領域です。3mから見て何の形かわかるか、を各案の判断基準にしました。
他自治体の実物を測るところから
全国200以上の自治体がご当地ナンバーを導入しています。栃木県日光市など先行事例のプレートと、河内町様が現在交付している既存プレートを集め、実際に成立しているものの寸法を測るところから始めました。感覚で決めず、うまくいっている例が図柄にどれだけの面積を割いているかを数字で押さえています。
途中で、既存の現行ナンバーに合わせて文字の大きさと文字間を統一し、寸法を書き込んだ図面を添える形に作り直しました。地色を白に、枠を4色で展開する案も、この過程で生まれています。「かっこいいか」ではなく「県に出せる書類になっているか」が、この段階の評価軸でした。
3案の作り方
3案は単なるバリエーションではありません。判断の軸を3つに分けて提示しています。図柄をどこまで大胆に置くか、色数をどこまで使うか、既存プレートからの連続性をどこまで残すか。役場の中で議論するときに「どれが好きか」ではなく「町としてどの方向を選ぶか」で話せる形にするためです。
C案は当初のグラデーション案を発展させたもので、印刷での再現性まで含めて検討しました。各案とも、寸法を書き込んだ確認用と、書き込みのない仕上がり確認用の2種類を用意しています。決裁の場に出す資料と、デザインを見る資料は別物だからです。
県警からの指摘で、キャラクターを動かした
ここがこの案件のいちばん面白いところです。
茨城県との事前協議の結果、首長との協議を経てB案の採用が決まりました。ところが同じ協議の場で、茨城県警から「全体のデザイン案は問題ないが、かわち丸の表示位置が視認性の妨げになるのでは」という指摘が入ります。
「かわち丸」は河内町様のイメージキャラクターです。町の顔を載せるのは当然の判断で、デザインとしても成立していた。それでも、ナンバープレートに求められる第一の機能は「番号が読めること」です。可愛さでも、町らしさでもない。
そこでキャラクターの表示位置を動かし、あわせてキャッチフレーズを「未来へつなげ KAWACHI LIFE」に変更しました。指摘を受けて直したのではなく、指摘が正しかったから直した。 公共物のデザインは、最後にこの判断ができるかどうかで決まります。
納品したのは、次の人が使えるデータ
2026年7月、茨城県等との本協議が無事に終了し、制作したデザインで交付に向けた準備が進むことになりました。
このあと、プレートの作成業者が選定・発注されます。業者側でデザインの微修正が入る可能性があるため、デザイン作成に使用した元データ一式をお渡ししました。
ここが実務の締めです。書き出した画像だけを渡すと、後工程で1mmの調整もできません。「きれいに見える画像」で終わらず、他人が続きを作れるデータにするまでが仕事だ、ということを体で覚える案件でした。
受講生の関わり方
受講生が3案の制作から、県協議に出す仕様図面の作成、指摘を受けての修正、入稿用データの整備までを担当しました。1回のデザイン提出では終わらず、協議 → 修正 → 再提出を数回まわしています。
関連リンク
このページについて:採用と協議の経過は当校の記録によります。交付の開始時期は町の手続きによるため、本ページでは扱っていません。契約条件・費用は掲載していません。
