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みつぼし醤油様|だし醤油のレシピリーフレット
愛媛県西条市丹原町の醤油メーカー、みつぼし醤油様(三星食品工業株式会社様)の、だし醤油を使ったレシピリーフレット(日英併記)です。

1|きっかけは「使い方がわからない」という声だった

みつぼし醤油様は、四国でもっとも古くからだし醤油を作り続けている醤油蔵を持ち、創業以来3代にわたって地域に愛されてきた企業です。掲げているのは「主張しすぎず、素材のうま味をひき出し食事が楽しくなる調味料作り」。
ご依頼は、アメリカ・シアトルでだし醤油を販売することになったところから始まりました。国内外で販売はしてきたものの、だし醤油の魅力を外国の方へ伝える説明が難しい。 そして日本国内からも「使い方がわからない」という声があった。
つまり、課題は「商品が知られていない」ではなく「買ったあとに使いこなせない」ことでした。だからパンフレットではなく、レシピリーフレットという形が選ばれています。
2|制作の前に、店へ行った

店主様には「地元丹原町を盛り上げたい=県内外からの関係人口を増やしたい」という思いがあり、姉妹校である当校(千葉)から卒業生とトレーナーが制作の主体として招かれる形になりました。海外向けの翻訳には、英語が得意なSTUDIO松山の卒業生が協力しています。
ヒアリング会は2025年7月12日(土)、店舗で実施しました。松山の受講生も見学として参加しています。

まず全員で、土曜日限定のいりこ出汁ラーメンをいただきました。魅力を伝えるためには、まず身をもって体験するところから。
これは段取りの都合ではありません。だし醤油のリーフレットを作る人間が、その出汁を飲んだことがあるかどうかは、誌面の写真の選び方にも、レシピの並べ方にも出ます。濃いうま味を感じながらもあっさりしていてつい飲んでしまうスープ、柚子胡椒を入れると変わる風味。この体感が、あとの判断の基準になりました。
3|約1時間半のヒアリングで聞いたこと

制作陣がまず事前情報の共有確認を行い、そのうえで次の項目を順に伺いました。
- 店主様のこれまでの経歴、取り組み
- 対象ユーザーの明確化
- 今回紹介するだし醤油3種類の特徴
- その特徴(強み)をどう書き表せばユーザーに伝わりやすいか
- トンマナのすり合わせ
- 今後の制作スケジュール、連絡方法、フィードバックの期間
ここで重要なのは、「3種類の特徴」と「どう書き表すか」を、同じ場で続けて聞いていることです。特徴を聞いただけでは誌面は書けません。作り手の言葉のまま載せると業界用語になり、こちらで言い換えると味が抜ける。その調整を、本人が目の前にいる場でやってしまう。

商品のことだけでなく、その背景や思いまで聞きながら、あらゆる視点から提案してイメージをすり合わせていきました。にぼしだし醤油は大根・牛すじ・カレーのような煮込み料理と相性がいい ── 掲載するレシピの選定は、この会話から決まっています。

ヒアリングのあとに振る舞われた醤油アイスにも、「主張しすぎず、素材のうま味をひき出す」という同じ思想が通っていました。この一貫性が、そのままデザインのトーンになります。
4|アイコンで、言語の壁を下げる
日英併記のリーフレットで、いちばん厄介なのは文字量が単純に倍になることです。同じ面積に2言語を入れれば、どちらの文字も小さくなる。読みにくいレシピは、台所で使われません。
そこで、分量と手順をアイコンに置き換えました。 大さじ・小さじ・カップ、火加減、時間。これらは絵にできます。絵にした分だけ、文章を減らせる。翻訳しなくていい情報を増やすことが、多言語対応でいちばん効く手です。
レシピの各項目は写真・アイコン・短い文の3層で組み、眺めるだけでも作り方の輪郭がわかる誌面にしています。
5|トーン ─ 「目立たないが、いい仕事をする」
ヒアリングで、ブランドのトーンを言葉として固めました。挙がったのは次のような表現です。
- 素朴/飾り気を抑える
- しなやかで女性的
- 目立たないが、いい仕事をする
- スーパーの棚にある商品より、少しだけ上品な価格帯の佇まい
この「目立たないが、いい仕事をする」という一言が、そのままデザインの方針になりました。レシピリーフレットは、主役ではありません。 主役は台所に立つ人と、その日の料理です。写真を大きく寄せて食欲を煽る作り方もできますが、ここではやらない。白を多く残し、文字の詰めと余白の取り方で成立させています。
すでに商品の郵送に同封しているリーフレットがあったため、そちらとトンマナを揃えました。1枚だけ新しくて浮く、という事態を避けるのは、既存ブランドの制作物では毎回効いてくる判断です。
6|売り場も見に行った


ヒアリング後、時間のあるメンバーで周ちゃん広場といとまちマルシェを回りました。四国最大級の産直市と、県内外からセレクトした商品を並べるショップです。
リーフレットは店頭の棚に置かれます。周りにどんなパッケージが並び、そのなかでどう見えるかは、机の上では決められません。同じ日に売り場を見ておくことで、「目立たないが、いい仕事をする」というトーンが、棚の中で埋もれる意味ではないことを確認しています。
7|「何もない町」という答え

ヒアリングの終盤、丹原町について伺ったところ、返ってきたのは「何もない町」という意外な答えでした。
上の世代があまりいないので、40代の同世代が行動次第で動ける人間関係の風通しのいいところ。何も無いさびれている町だからこそ、0からなんでも作れる、なんでもできる町。
店主様は本業のかたわら、地域創生のための『CREW TAMBARA』という活動にも取り組まれています。
この一言は、リーフレットの立ち位置も変えました。これはだし醤油の使い方を説明する紙であると同時に、丹原町という場所を県外・国外に届ける紙でもある。 商品の背景に町があることを、どこまで前に出すか。その判断の根拠が、この会話にあります。
受講生の関わり方
トレーナーがディレクションに入り、千葉の卒業生が現地訪問から制作までを担当。英訳はSTUDIO松山の卒業生が協力しました。松山の受講生はヒアリング会に見学として参加し、ヒアリングのやり取りをその場でメモする形で、案件の立ち上がりを体験しています。
関連リンク
このページについて:成果物の写真とヒアリングの経緯は当校の制作記録によります。契約条件・費用は掲載していません。
参考:https://school.dhw.co.jp/school/chiba/blog/clientwork_2025.html
