ブランディング/動画
住友重機械マテリアルソリューションズ株式会社様|社名変更にともなうブランド構築
半導体製造装置メーカー、住友重機械マテリアルソリューションズ株式会社様(2026年1月1日付で住友重機械イオンテクノロジー株式会社様から商号変更)のブランド構築です。2024年の製品ロゴから始まり、社名変更にともなう視覚基盤一式まで、2年にわたって担当しました。
第1章:1つの製品ロゴから始まった(2024年)
最初のご相談は、新製品のロゴマークでした。それ以前のロゴは代理店経由で海外のデザイナーが制作されていて、できあがったものに愛着を持ちにくいという課題をお持ちでした。距離が遠いと、なぜその形なのかを聞けない。聞けないものは、社内で説明もできません。
3段階のコンペにした
そこで、当校の受講生・卒業生によるコンペ形式にし、3段階のプロセスを組みました。
- 2024年5月7日 ショート質問会 — 手を動かす前に、装置のこと・市場のこと・社名の由来を聞く場
- 2024年5月31日 中間発表会 — 途中経過を見せて方向を確かめる
- 2024年7月19日 最終発表会 — 完成案のプレゼンテーション
参加したのは11名以上の受講生・卒業生。松山・千葉の校舎とオンラインが混在するチームです。ロゴを1つ作るのに質問会から始めて2ヶ月半かけるのは、効率だけを見れば長い。ただし「なぜこの形か」を作り手が説明できる状態は、この過程からしか生まれません。前のロゴで足りなかったのは、まさにそこでした。
出てきた案の方向
- 「S」とサソリのシルエットを融合させた、鋭さのあるマーク
- イオンビームを流線とグラデーションで表現した案
- 「S」と無限大「∞」を組み合わせた案
- さそり座の一等星アンタレスから取った赤をアクセントに使う案
共通していたのは、装置本体に貼ることを前提にした判断です。工場の照明の下、数メートル離れて見られる。細い線と繊細な階調は使えません。書体も角のある工業的なものに寄せています。ロゴを「画面の中の絵」ではなく「金属に貼るもの」として設計する、という点でコンペ全体の目線が揃っていました。
第2章:社名が変わる(2025〜2026年)
2025年、住友重機械グループの半導体事業強化にともなって商号変更が決まります。ここで、製品ロゴの関係から新社名の視覚基盤をまるごと設計するプロジェクトに発展しました。
受託した範囲
- ロゴマーク — 候補案の複数制作 → 選定案の修正 → 最終化
- 各種ビジュアルのサンプル制作
- 基本デザインの開発とガイドライン — フォント・色・写真の使い方を明文化
- 社名変更プロモーション用のイメージデザイン
- ブランドムービー(日本語版・英語版)
- 壁面広告(縦9m×横3m)、名刺、企画書テンプレート
本体はガイドラインだった
この案件で実質的な中心にあったのは、ロゴでも動画でもなくガイドラインです。
社名が変わるということは、名刺・スライド・カタログ・展示会ブース・採用資料・Webサイトが一斉に入れ替わるということです。デザイナーが1点ずつ作れる量ではありません。
フォント・色・写真の選び方を先に決めて文書にしておけば、社内の誰が資料を作っても同じ会社に見える。「作る」より「作れる状態にする」ほうが、この規模では効きます。


9つの言語・地域版をつくった
ガイドラインは1冊ではありません。日本語/英語/欧州/欧州SASU/米国/韓国/中国(簡体字・繁体字)/上海/台湾と、言語と地域ごとに版を分けて整備しました。
社名の表記は、国によって法人格の書き方も、併記すべき現地語も変わります。「同じロゴを翻訳する」のではなく、その国で法的にも視覚的にも正しい形を、国ごとに決めておく作業です。
あわせて、300ppiのロゴデータを縦組み・横組み・フル表記・最小表記の組み合わせで書き出し、現地の担当者が迷わず使えるファイル一式として納品しています。ガイドラインが読まれなくても、正しいファイルを開けば正しく使える状態にしておく。これが実務では効きます。
ブランドムービー ─ 言葉を先に決めた
ブランドムービーは日本語版と英語版を制作しました。展示会場のモニターでの上映が主な用途です。
この種の映像で最初に決まるのは、映像ではなくナレーションの言葉です。「人々の豊かな日々を、支えるために。社会や産業の革新を、促すために。」から始まり、粒子加速器や量子ビームという技術の話を経て、「広くとどける、深くよりそう。」で社名変更に着地する。技術の説明で終わらせず、その技術が誰の何を支えているかに戻す構成です。
英語版では、字幕を2段組みにする・テンポを調整するといった修正を重ねました。日本語のナレーションに合わせて組んだ尺は、英語にすると文字数が変わります。翻訳は、字幕のレイアウトと映像の尺の問題でもあるということが、実務としてはっきり出た工程でした。
愛媛の壁面広告 ─ 縦9m×横3m
愛媛の展示場に掲出する壁面広告は、縦9m×横3m。ビル数階分の高さで、縦横比は1:3です。

この面積では、パソコンの画面で作ったバランスがそのまま通用しません。人が立って見上げる位置から、視線がどこで止まるか。近くを歩く人と、離れた場所から見る人が同時にいるという前提で構成する必要があります。
採ったのは、縦長を3層に割る方法です。
- 上層 — 星空のような深い青のグラデーションに、企業メッセージ「広くとどける、深くよりそう。」と社名。遠くから見えるのはここだけ
- 中層 — 製品である装置そのもの。近づいた人が「何の会社か」を理解する層
- 下層 — 白地に「半導体づくりを愛媛から支える」。地元の人に向けた一文で、愛媛だけ赤で抜いている
9mの高さを1枚の絵として使うのではなく、見る距離ごとに読ませるものを変えているのがこの構成です。いちばん下の「愛媛」が赤いのは、この広告が全国向けではなくその土地に立つ広告だからです。
制作したのは卒業生2名。コンペで応募し、修正対応まで担当しました。トレーナーがブラッシュアップに入り、2026年4月末に最終納品してプロジェクトが完了しています。
展示会ブースと雑誌広告


展示会ブースの壁面は、実物の装置が置かれることが前提のデザインです。壁が主張すると装置が沈み、壁が弱いとブース全体がぼやける。青を基調にしたグラデーションで奥行きを作り、社名とメッセージを大きく置いて、装置の周りは意図的に空けています。
雑誌広告は逆に、紙面に装置がありません。そこで言葉だけで成立させる方向に振りました。青一色の紙面に「広くとどける、深くよりそう。」を大きく置き、その下に本文を組む。粒子加速器や量子ビームという技術の話を経て、社名変更の告知に着地します。
同じメッセージを、置かれる場所ごとに別の見せ方に翻訳する。 ガイドラインを先に作った意味が、ここで効いてきます。
この案件が特別な理由
受講生・卒業生が、東証プライム上場企業グループの社名変更という、やり直しのきかない仕事に入っています。ロゴ、ガイドライン、映像、大型広告。しかも2024年の製品ロゴから続いた関係の上に乗っている。
1つの仕事をきちんとやると、次の仕事が来る。 このページはその実例です。
関連リンク
- ブランドムービー 日本語版(YouTube)
- ブランドムービー 英語版(YouTube)
- 住友重機械マテリアルソリューションズ株式会社様 公式サイト
- 住友重機械グループ2社の半導体事業強化に向けた商号変更について(2025年12月10日)
このページについて:商号変更は住友重機械工業株式会社様のプレスリリースによります。制作の内容は当校の記録によります。契約条件・費用は掲載していません。
